芥川賞受賞の「時が滲む朝」を読んだが、何故受賞したかがよく分からない。もちろん悪い作品ではないとは思うが、文体も素材も決して抜きん出ているものがあるわけではない。確認してはいないが、他の候補がこの作品以上に凡庸なものであったのだろうか?
本作品に関して述べれば、1988年7月〜2000年12月31日かけての中国の政情と主人公達のあまりに普遍的な青年期のはやる心と挫折を重ね合わせた作品だ。描かれる時代背景が、1989年6月4日の天安門事件、1992年4月25日に亡くなった尾崎豊や1995年5月8日に亡くなったテレサ・テンの歌、1997年7月1日の香港返還、2000年2月17日に発売されたWindows2000という心理的にも時間的にも日本人に近い素材で描かれていて、中国版の「イル・ポスティーノ」と「フォレスト・ガンプ」を足して二で割って日本人にも解り易く描かれた作品と言ったところか。もっと俗な言い方をすれば、ベトナム戦争と911に続く戦争の間奏曲を演歌風にアレンジした作品。
ただ、その12年、自分達は何をしていたのだろうと考えると、日本の甘さと、中国の厳しさが実感され、それからさらに10年経とうとしている大陸のマグマに恐怖を覚えるのでもある。
0 件のコメント:
コメントを投稿