2008年10月14日火曜日

「EBMジャーナル」の休刊

 先日、EBMに関する投稿をした矢先、1999年12月に創刊された「EBMジャーナル」が休刊になるそうだ。編集後記では、十分にエビ好きの日本人医師を養成出来たことで雑誌の使命が果たせたことで休刊とするとのこと。同時に、EBMユーザの教条主義からの脱却とエビデンスの生産者としての役割が今後の課題として挙げられている。
 休刊の餞として各記事の重要リンクを挙げておく。

特集「実践!私のEBM」
  • 私の情報収集—有料の二次媒体
The Cochrane Library

 Cochrane Library:EBMの総本山コクラン共同計画の成果

UpToDateの使い方 

 UpToDate:年三回更新だが、網羅性に優れている。
 MD consult

ACP-PIER

 ACP-PIER:米国内科学会のサービス

DynaMedでエビデンスを手軽に手に入れよう

 DynaMed:毎日更新だが、疾患ベースの配列。
 Journal Watch

Clinical Evidence

 Clinical Evidence:BMJのサービス
  • 私の情報収集—無料の二次媒体
「Evidence-Based On-Call」がもたらしたもの

 EBOC:2003年以降更新されていない。

BestBETsとPedsCCM—救急・集中治療領域の二次情報源

 BestBETs:英国マンチェスター王立病院救急部による。EMJに連載中。
 PedsCCM:小児集中治療医学の論文レビュー

Google

 Google Scholar
 PubMed
  • 私はだまされない—新しく生まれつつあるバイアス
企業主導型大規模臨床試験の問題点

 CASE-J試験:ブロプレス(武田薬品工業4502)
 JIKEI HEART study:ディオバン(ノバルティスファーマ)
 参考:他のARBには、ニューロタン(万有)、ミカルディス(アステラス製薬4503)、オルメテック(第一三共4568)、アバプロ(大日本住友製薬4506)がある。

サブグループ解析を読む際の注意点

 プライマリエンドポイントに有意差のないサブグループ解析は信用してはならない。
 交互作用の検定(異質性の検定が必要)

PROBE法の問題点

 ランダム化は行うが、二重盲検せずに、エンドポイントの評価をマスキングする。
 アウトカムに、症状や入院・手術という介入行為などが入ると情報バイアスが入り込む。

複合エンドポイントの問題点

 すべてのエンドポイントが同様に重要なものか?
 すべてのエンドポイントが同様の頻度で観察されたか?
 それぞれのエンドポイントで同様な相対リスク減少が見られたか?

アウトカム報告バイアス

 UMIN-CTR
 WHO ICTRP
  • 私はこう決断する
EBMの自分史からみた私の臨床決断法 宮地良樹先生

 「患者さんが自分の親や子供だったらどうするか。」

初期研修,後期研修,生涯学習とEBM 岩田健太郎先生

 限界を認識し、寛容な、腰の低いEBM

MRIは脳卒中の診断に役立たない 池田正行先生

 MRI信仰は、医師患者の相互不信の産物。

横綱のふんどしで相撲を取ろう—臨床決断の根拠 仲田和正先生

 一流雑誌の総説の利用と得た知識の押し売り。参考:「西伊豆早朝カンファレンス

There Ain't No Such Thing As A Free Lunch. 野口善令先生

 EBMでも分からないことはある。その時は、直感が意外と正しい。

 オープンソース教条主義者の私としては、Open MedicinePLoS Medicineへの言及も欲しかったのですが…いずれにせよ、EBMの実践の最大の障壁は、英語の速読と、「嘘には三つの嘘がある。嘘と真っ赤な嘘と統計だ。」と揶揄される統計学の本質的な理解であろう。そして、それらを克服したとしても、解決される問題は、ごく一部で、未解決の問題は、やはり暗闇を手探りで進むしかないのである。だからといって、ニヒリズムには陥らず、臨床の現場からこつこつとエビデンスを作り上げていきましょうってことが、結論でしょうか。

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