2008年6月12日木曜日

秋葉原事件に思う

 まずは、犠牲者のご冥福をお祈りいたします。
 医療改革のみならず、犯罪もアメリカン・スタンダードの後追いをしているような気がします。だからと言って、泥縄式に派遣の権利を守るフリをする対策をすると、社会改革には、民主主義的過程よりも、暴力が有効というメッセージになってしまうので避けたほうがいいでしょう。もちろん長期的ビジョンとしては、ワークシェアや高負担高福祉、教育機会の平等というヨーロピアンスタイルを再考する必要があるかもしれませんが、医者の目で見ると、有事の対応システムに課題があるように思えます。
 医者を20年弱していても刺傷による出血性ショックなど経験することはなく、改めて学習する機会を得ました。救急ヘリ病院ネットワークのサイトにある資料によると、イギリスなどでは、まずヘリコプターで救急専門医が駆けつけ、ルート確保には、骨髄補液の針を打ち込むガンを使うこと、心臓マッサージは、15秒で適応判断、2分で"Clamshell thoracostomy"による開胸、タンポナーデの解除、心臓に穿通があれば、バルーンなどで閉鎖をした上での直接心臓マッサージを行うとのこと。日本の場合、医者不足でそのような体制の構築は困難でしょう。現実的には、最寄の医者が駆けつけ、救急者に、注射ガンや開胸セットを備えておくことでしょう。しかし、現在の風潮では一介の家庭医などがそんなことに手を出したら訴訟に巻き込まれる可能性が高いと思われ、よっぽど日頃からそんな手技に慣れている医師以外は、たとえ知っていたとしても、実践せず、無難な救命処置でお茶を濁すでしょう。
 つまり、有事の対応においては、この辺の萎縮医療を促す風土が最大の関門なのかもしれません。

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