2008年3月19日水曜日

ACH2.0ー競合的仮説分析のマトリックス作成ソフト

 一冊の本を読んだ。「仕事に役立つインテリジェンス―問題解決のための情報分析入門 (PHP新書 511)」という本で、まさに日常の診断という仕事に資するところを期待して読み始めた。未来に対する決断に対するアートと科学的方法の役割を挙げた上で、最近の認知心理学的の成果、ヒューリスティックスの落とし穴を整理している。その落とし穴を回避する方法の案として70年代にCIAで開発されたAnalysis of Competing Hypotheses(ACH)が解説されている。その8ステップを列記すると、
  1. 考えられる限り可能な仮説を挙げなさい。 異なった専門で構成される分析者グループでそれぞれの可能性につきブレインストーミングしなさい。
  2. それぞれの仮説を支持あるいは否定する根拠や賛否両論のリストを作成しなさい。
  3. 上端に仮説を並べ、その横に根拠を上から下に書いた表を準備しなさい。 根拠と議論の「診断性能」を分析しなさい、どういうことかと言えば、仮説の相対的な見込みを判断する際にどの項目が最も役立っているか特定することです。
  4. 表を精密にしなさい。 仮説を再考し、診断的価値のない根拠と議論を削除しなさい。
  5. それぞれの仮説の相対的な見込みに関する一時的な結論を出しなさい。 それらを立証するよりむしろ仮説に論駁しようとすることによって、検証を続けなさい。
  6. 結論が根拠のうちの少数の決定的項目にどれほど敏感か分析しなさい。その根拠が間違っているか、誤解されているか、多様な解釈が出きるならば、決断が導く結果の影響を考慮しなさい。
  7. 結論を報告しなさい。 最もありそうなものみではなく、すべての仮説の相対的な見込みについて議論しなさい。
  8. 出来事が予想と異なる経過を取っているのを確認するための指標を特定しておきなさい。 
 読後、医学生時代から叩き込まれた鑑別診断、pertinent negativeとかいう考えが、このCIAの分析方法に端を発するのか!という「アハー体験(Ach Erlebnis)」をした。謀略機関の思考法が医学会でも応用されているというアメリカという国の柔軟性に驚嘆した次第である。しかし、残念ながらこの方法論は、時間的な猶予のない臨床場面では簡略化せざるを得ず、さらに医療費の高騰の一因となっていることは否めない。
 気前のいいことに、上記の表を作成するためのソフトがプラットホームを選ばない形で公開されている。インストールを試みたが、私のubuntu環境では、実行出来ませんでした。暇が出来たら、WINEで実行してみます。

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